続マールス・タピルス・トゥムルトス

※[USER]は…

[USER]が寮に戻ると、ルームメイトからパジャマパーティーに誘われました。この部屋に同級生たちが集まるようです。

[USER]はパジャマパーティーに参加することにしました。キッチンでジュースとお菓子を確保して、温かい格好で集合です。
皆でビスケットをかじりながら、先生のこと、授業のこと、新発売のチョコのこと、マールスタピルスのこと、話の種は尽きません。
「アロニカ先生が、今度のマールスタピルスはひっくり返ったセミを山盛り降らせてくるって言ってたよ」
「セミ？　蛇って聞いた気がするんだけどな」

トランプで盛り上がっていた頃、寝室のドアがノックされました。他の部屋から来た生徒が、ひょっこり顔をのぞかせます。
「ねえ、私たち談話室の"動体検知の魔法"を見たいんだけど、誰か一緒に行かない？」

トランプで盛り上がっていた頃、寝室のドアがノックされました。他の部屋から来た生徒が、ひょっこり顔をのぞかせます。
「ねえ、私たち談話室の"動体検知の魔法"を見たいんだけど、誰か一緒に行かない？」

言われてみれば、気になります。カードを置いて"隠れ身呪文"を唱え、一緒に談話室を覗いてみることにしました。
【スパークル・スケッチ】
成功条件：美術10 歴史5 生物学5
※同行者全員のステータスに美術部員（美術5 歴史2 生物学2）を加えて判定
※「呪い避け眼鏡」を所持しているキャラクター毎に全ステータス+5

言われてみれば、気になります。カードを置いて"隠れ身呪文"を唱え、一緒に談話室を覗いてみることにしました。
【スパークル・スケッチ】
成功条件：美術10 歴史5 生物学5
※同行者全員のステータスに美術部員（美術5 歴史2 生物学2）を加えて判定
※「呪い避け眼鏡」を所持しているキャラクター毎に全ステータス+5

"動体検知の魔法"も気になりましたが、おそらくは明日以降も当分同じものが見られる筈です。[USER]は特製レーズンサンドクッキーを勝ち取るべく、このままトランプの決着をつけることにしました。
そのうちに、ジュースが無くなったと誰かが言い出しました。

"動体検知の魔法"も気になりましたが、おそらくは明日以降も当分同じものが見られる筈です。[USER]は特製レーズンサンドクッキーを勝ち取るべく、このままトランプの決着をつけることにしました。
そのうちに、ジュースが無くなったと誰かが言い出しました。

"動体検知の魔法"がゆったりと飛び回る談話室の中、肘掛椅子の影で何かが動いたことに[USER]は気付きました。
窓から差し込む月の光を赤く跳ね返すもの――変種マールスタピルスが隠れているようです。
黒い靄がうっすらと、床の上を這い始めました。

職員会議はあっちへ脱線したりこっちへ脱線したり飽きて落書きを始めた先生が隣から魔法の杖を脇腹にぐりぐり刺されたりしましたが、どうにか夜の見回りと"動体検知の魔法"の当番が決まりました。[USER]先生は、

"動体検知の魔法"は、校舎内でいちばん高い塔の上からそれぞれの寮に向かって飛ばすことになりました。空中を浮遊する"移動教室"へ、大きな荷物がある時や、飛行箒術のあまり得意でない生徒も最短距離で飛んでいけるように、塔の外側を取り巻く展望台のようなバルコニーがあるのです。
一日の授業や部活動が終わったら、夜の集合時間までにぐるぐると塔を上って行かなくてはなりません。

校舎のなかを通ってくる他の先生よりも早く、一番乗りで塔に着いたようです。最上階のバルコニーに降り立ち、格子のはまった掃出窓の鍵のフックを外そうとして――室内の招かれざる小さな客に気が付きました。
白黒模様の体に、目を凝らせばプチプチと赤い斑紋が見えます。
どうやら、件の変種マールスタピルスのようです。

校舎3階の廊下を塔に向かって歩いていると、研究室の前で生物学科の先生たちが何やら議論しているのに出会いました。
「追跡魔法を掛けて……」「いや、幻獣に魔法を掛けると行動パターンに影響が出るかも知れませんよ。一度捕獲して発信装置を」「魔導式の発信装置なら追跡魔法掛けるのと同じですよね？　捕まえて疑似空間で飼育してみたらいいんじゃないですか～？」「何食べるんだ、アレ」
どうやら変種マールスタピルスの調査方法で盛り上がっているようです。

そうっと、ゆっくりと、音を立てないように……[USER]先生は窓の鍵を開け、わずかに開いた隙間から室内の変種マールスタピルスに狙いを定めました。
標的が小さいのは難点ですが、のんびりと床を嗅ぎ回っている今なら拘束魔法を当てられる筈——
けれど、魔法が当たった瞬間に変種マールスタピルスから黒い靄がふしゅっと噴き出して、幻獣の姿は消えてしまったのでした。
ちょうど階段を上ってやってきた他の先生に事情を説明し、一緒に探し回ったものの、部屋のどこにも見当たりません。
取り逃がしたのは残念ですが、"動体検知の魔法"を飛ばせば居場所が分かるかも知れません。
帰りに手分けして校舎内の見回りをすることになりました。

[USER]先生は無音化の呪文と隠れ身呪文を使い、窓の鍵に手をかけました。手を触れている間は、無音化の呪文の効果で鍵のフックが外れる音も、窓が開く音も聞こえません。
そっと塔の室内へ、透明になった身体を滑り込ませました。
人間の目には、風でも吹いてたまたま掃出窓が開いたように見えるでしょう。隠れ身呪文は姿だけでなく、息づかいや魔力といった気配も隠蔽してくれます。獣の目には――どうでしょうか。
マールスタピルスはのんびりと床を嗅ぎ回っています。
変種になっても動きはあまり素早くないようです。黒いぎょろぎょろとした目であちこち視線を動かしていますが、そういえば瞬きを全くしないな、と[USER]先生は思いました。攻略の糸口になりそうかと言われると、些末なことかも知れませんが。
けれどそのうちに、変種マールスタピルスはぴたりと足を止めて長い鼻で空中のにおいを嗅ぐような動作をしました。そしてふしゅっと空気の抜けるような音がして、微量の黒い靄が噴き出すのと同時にその姿が消えてしまいました。

生物学科の研究室の前を通り過ぎて長い階段をぐるぐると上り、[USER]先生は塔の最上階に辿り着きました。大きな掃出窓とバルコニーの向こう側に、すっかり日が暮れた星空と"移動教室"のオレンジ色の対箒灯火が光っているのが見えます。他の先生たちはもう集まっていました。
バルコニーに出て校舎を見下ろせば、眼下には生徒が帰った後の暗い廊下を淡く光りながら徘徊するゴーストやまだ灯りのついている教官室、図書館棟のあちこちで夜間整理が発生している青い魔法光も見えます。
発動した無数の"動体検知の魔法"が群れをなし、光の帯のようにそれぞれの寮へと飛んでいきます。

≪見回り当番の先生は、屋外を場合によっては数時間歩き回るかもしれないのでしっかり温かい格好をすること≫
おじいちゃん、もといホーキンズ先生の忠告に従って上着や防寒具を着込み、[USER]先生は集合場所である校舎の正面玄関のホールに向かいました。
フレッチャー先生がこちらに気付いて手を振っています。飛行箒術の競技用の"ドラゴンの氷結ブレスもシャットアウト！"とあちこちで宣伝されている分厚い革手袋を嵌めてきたようです。
「おつかれさまでーす、[USER]先生！　いま●●●ート先生と見回りの手順を確認してたところなの。あたし"守護の魔法（プラエシディオ）"って得意じゃないから、ついでにやり方詳しく訊いちゃったわ！」
陰に隠れるように立っていた若い男性が顔を覗かせました。
「どうもこんばんは。ええと[USER]先生は、防衛魔法は……」

それはそうよね、とフレッチャー先生は快活に笑って、杖先に魔法の光を灯してさっさと歩き始めました。●●●ート先生はばつが悪そうに「いやすみません、フィールドワークに出てばかりな所為で、あまりお話をする機会が……」と頭を掻いています。
前を歩くフレッチャー先生が、足元を照らす杖とは逆の手で"守護の魔法"の杖運びを復習しています。
「教員免許を取る時の講座で練習したけど、あとは避難訓練以外で使うタイミングが無いのよね、"守護の魔法"！　あたしたちは初動班の先生方が先に掛けておいてくれたのを見回りついでに補強するだけで、失敗の心配はしなくていいみたいだけど、[USER]先生の事は頼りにしてますからね！
――ところで"結界の魔法"って"守護の魔法"とはどう違うの？　結界って眠り谷だと防衛魔法学の中級クラスで習う魔法でしょ、あたし必修の初級しか取らなかったのよね」

未開地でのフィールドワークならいざ知らず、日常では防衛魔法を使う機会がなかなかありません。
それもそうよね、とフレッチャー先生は快活に笑って、杖先に魔法の光を灯して歩き始めました。空いているほうの手で、空中に"守護の魔法"の杖運びを描いて復習しています。
「とはいえ、あたしたちは初動班の先生方が先に掛けておいてくれたのを見回りついでに補強するだけで済むから気が楽よね。マールスタピルスだって、変種といっても死人が出るような猛獣じゃないと思うし――[USER]先生はどう思う？」

「"守護の魔法"は、結界魔法に盾の魔法を掛け合わせて近代魔法として創出されたものですよ。効果としてはだいたい似ていますが成立年代と使いやすさの違いでしょうね、あとはまあ……解除の方法とか。
元々の古典魔法の結界は『術者周辺の空間を清浄な、或いは術者本人にとって都合の良い力場として外界と切り離す』というのが成り立ちなんですけどね」
「え、でも"立入禁止の結界"ってよく見るけど、外側から張るわよね？」
「術者の出入り自由な結界やら反射効果付きの結界やら、歴史を辿ればどんどん変わり種が登場していますね。それだけ多様な需要があったんでしょうが、学校で教えるには専門性が……」
薬学の講師にしては●●●ート先生はやたらと結界魔法に詳しいようで、声のボリュームを抑えながらもついつい話が盛り上がってしまいます。
――雑談しながら歩いているうちに、突然前方の植え込みがガサガサ不自然に揺れました。

結界をより取り回し易く、誰でも扱えるようにしたものが"守護の魔法"で、逆に古典魔法からの専門性を保っているのが近代の"結界の魔法"。
そう説明しても、逆にフレッチャー先生は疑問が増えたようでした。
「じゃあ例えば、"結界の魔法"だったら『変種マールスタピルスは寮内に侵入できない』みたいな結界も作れるのかしら。"守護の魔法"って基礎的な防衛魔法で、そんな複雑な効果は出せないでしょ？　専門の先生だけで結界張ったほうが話が早い気がするんだけど……それに、夜だけ"守護の魔法"で寮への出入りを制限したところで、昼間は通行自由なんだからあんまり意味無いわよね。これ、何のために掛けるのかしら」
「フレッチャー先生、それ職員会議で訊けば良いのに」
「訊いてたらあの脱線ばかりの会議が終わらないじゃない。ガエルシウル先生の発案なら『やらない理由があるからやらない』って事は分かるのよ、理由のなかみが分からないだけで。それに、訊いたってあたしたちがやる事は変わらないんだから、これはただの雑談よ」
「まあ……結界に関して言えば、現状だと『情報不足で、クリティカルに変種マールスタピルスを弾ける結界が設計できない』ってところでしょうね。これに関しては、指示された通り変種を捕獲して生物学科と防衛魔法学科に送れば研究が進むかも知れません。ただ野生の獣や幻獣類を"結界"や"楯"で完璧に制御できる保証は無いんですよ。獣避けの魔法はそれこそ古典の時代から研究されていますけど、餓えた動物には力尽くで突破されることもある。
反面、そもそもマールスタピルスは警戒対象の幻獣ですが、学校の活動を即座に止めるほどのものじゃない。変異種も危機的状況ではない、というのが学園長や指揮を執ってる先生方の判断なんでしょうね。入学までの経歴次第で個別にケアの必要なこどもは居るかも知れないけど。
つまりあの人たちがとりあえず止めたがってるのは、ふらふら夜中に出歩いてキッチンで幻覚を見ながらお腹を出して昏倒する生徒や、寮の外へ夢遊病のように連れ出されて池に落ちたりオバケアカマキガミに齧られちゃう生徒のほうじゃないかな、と思うんですよ。あとこっそり青い雨寮の肖像画裏の抜け穴から、夜の森の肝試しに出かけちゃう生徒……おや、どうかしました？
――とにかく、未知の変異種の情報を得られればよし、捕獲できればお手柄、あとは生徒たちに異常が無いのを確認できれば僕たちの任務は完了、って事で。
さて、どの寮から巡回しましょうか？」

白い猫寮は全室異常無し。"守護の魔法"にも綻び無し、今のところ"動体検知の魔法"にも反応はありません。
パジャマパーティーをしていた3年生の部屋を覗いて「キリの良いところでちゃんと寝るように」と声を掛けると、ココアを3杯用意してくれました。優しさなのか、袖の下というものなのかは判断に迷うところです。
次の見回りは――

白い猫寮は全室異常無し。"守護の魔法"にも綻び無し、今のところ"動体検知の魔法"にも反応はありません。
パジャマパーティーをしていた3年生の部屋を覗いて「キリの良いところでちゃんと寝るように」と声を掛けると、ココアを3杯用意してくれました。優しさなのか、袖の下というものなのかは判断に迷うところです。
次の見回りは――